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契約的束縛・誘惑なる秘密
第30章 香港―明かされる秘密と選択
ルークが倉庫に一度戻って来たのは、主宰の変調が始まって直ぐの事。多分に此処から連絡が行ったのくらいは予測出来ます。
「……仁科様、これは……」
「ルークは分かるでしょうね」
「この反応は仮眷属の……」
「えぇ……。拠点爆破で自らも死のうとしていたのを、私が無理に助けた。……まだ助かるかまでは、私でも読めません」
「駐車場の血痕、やはりあれは櫻澤の……。出血が過ぎたでしょうか」
「手当てしていれば、そこまでの大怪我ではなかったというのに、主宰は命より全員を助ける方を選びました」
「その結果が……これ……」
「……えぇ……」
意識無く苦しむ姿は、見ている此方にも苦しみが移って来るよう。遥か昔に躰を作り替える苦痛は、ある種の地獄より辛いと聞いた事があります。……私が試したのはルークただ一人、なので凡例が少ないのも不可能要素の1つ。
「あまり長く此処には居られません。美波達を追わなければいけませんので」
「では、櫻澤が仮眷属に変化するのを見届けられない……」
「そういう事になりますルーク。そして今、主宰を移動させるには危険を伴うでしょう。警察が動いています、主宰だけではなく私達全員が危ない橋……分かりますね?」
拠点をあれだけの人数で包囲したとなれば、この近辺にも手は回っている筈。美波達が車で逃亡しても、何処かで警察に引っ掛かる恐れを帯びている。
「もう少し持たせなければなりませんね。……せめて全員が安全な場所に逃れるまで、倒れている訳にはいきません」
「仁科様、まさか!」