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契約的束縛・誘惑なる秘密
第30章 香港―明かされる秘密と選択
「赤子と同じと言えばいいのでしょうか、ベッドから動く事もなく、こうして窓から外を眺めるばかり。
こればかりは自分でも手に終えません盟主」
「……まさか、こんな反作用が……。助けたのが仇になる、そんな日本語がありますが、本当になるとは……」
生き残った変わりに記憶を失う、誰がそんな事を想定したでしょう。今の主宰には私達は見えていない、感情も無くただ虚ろに外の景色を無意識に眺めているに過ぎない。
(こんな……こんな結末とは……。いえ、主宰が生きてくれていた事に感謝しなければならないんでしょう。……残酷な生ですが)
今の主宰を皆に会わず訳にはいかない。ですが、ずっと日本に留め置く事も出来ず……。重要参考人として指名手配されている櫻澤霧斗、見付かれば記憶が無くとも警察は主宰を捕まえる筈です。
「どうすればいいのか……。少なくとも日本に置いておくのには無理があります」
「……はい、恐らく捕まるのは時間の問題かと」
「他の方法……。選択肢は限りなく少ない、ですねルーク?」
「ごもっともです仁科様」
記憶を失った主宰を安全に逃がすには、それなりに自分で動いてもらわければ困ります。でも、主宰を見ていると、このままそっとしておきたい私の想い。
争う事なく穏やかな生活を、それも少し望んでしまうんです。
「どうすればいいのか……。力は私が封じます、過ぎたる力は普通に生活するには必要ありません。後必要なものは……」
見る限り自己というものが無い主宰、それを私が強いていいのか躊躇いはありますが、自然に振る舞うには必要最低限の経歴と記憶は必要になります。