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契約的束縛・誘惑なる秘密
第31章 香港―男達との再会―櫻澤
「そ、それでね、良い方の話なんだけど……」
「美波ぃー、今話変えなかった?」
「宮野さん、それ突っ込む?」
「仁科と美波だから、とんでもない事になったくらいは分かるけど?」
「ま、まあね……」
「私はただ格闘したまでです宮野」
「それで慌てるワケー?」
こんな時に……いや、こんな時だからこそ宮野の突っ込みか。相変わらず空気を読まないのは、日本に居た頃と同じらしい。……宮野らしいが。
「話を早く切り上げたかったの、待っている人が居るから」
「廊下でずっとは可哀想だと思いますよ?」
「げっ、他にも誰か居たんだ」
「珍しいな、人を連れて来るとは……」
「連れて来るべき、そう判断しましたので」
「うん。これが良い方の話。本郷さん、宮野さん、驚かないでね」
美波がリビングのドアに駆け寄り扉を開く。そこには俺達と同じCross selsの黒服を着た男が、壁を背にして佇んでいる。……だがあの姿……は……。
「……まさか……」
「…………え?」
俺も宮野も、幽霊を見る思いでドアの向こうを見て、声すら簡単に出て来ない。
そうだろう? 既に居ない筈の姿が、直ぐそこにあるんだ!
「……本郷、宮野、久し振りだな? なんだその幽霊を見る目は。死にかけたが俺は生きてるぞ、ちゃんと足もあるだろうが」
「……主宰……」
「マジ!? 本物!?」
「他に誰が居るんだお前ら?」
ゆっくりとリビングに入って来る主宰。俺は、俺達は幻を見ているのか?
死んだ筈の主宰が、生きて目の前に居るなど、どうして信じられる!?