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華の王妃
第2章 離宮の妃
リンダリア・ルシル・ファルミア・ルーカス
それが離宮の妃と呼ばれているこの国の王妃となった少女の
名前だった。
ただ世間ではこの名前は大っぴらには呼ばれていない。
何故ならリンダリアが南に位置する大国ルーカスの王妃だったからだ。
否、ルーカスの王は今だ存命である。
リンダリアは紛れもなく現王妃である。
だがその生死は不明とされていてルーカスではリンダリアを溺愛する
コーラスが政事の合間を縫って自ら探索に行くほどであった。
自分はここにいる。
助けて。
アトラスに捕らえられてから何度逃げ出そうと思ったか。
何度周囲に助けを求めたか。
せめて自分がここにいることだけでも知らせたい。
けれど自分はもうアトラスに散々凌辱され穢れてしまった。
もう王には顔向け出来ない。
死を選ぼうにもお腹には子が宿っていて。
心優しいリンダリアには尊い命を自分の都合で殺すことなど
出来なかったのだ。