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華の王妃
第2章 離宮の妃

がっしりとした大きな体躯と豊かな黒髪の巻き毛を持つアトラス王は
美男子ではないが男らしい精悍さに溢れた美丈夫だ。

元々アルゴスは山々に囲まれた建国されて百年あまりの新興国だった。
野心に溢れた戦好きのアトラスは即位すると周辺の小さな国々を次々と
傘下に収め領土を拡大してきた王であった。

国土を広げ征服した住民たちを奴隷にしてきた。
そして高貴な姫や王女たちを自分の後宮に入れては飽きるまで蹂躙した。

英雄色を好むと言うがアトラスのそれは尋常ではなく無類の女好きと言っても
良い。後宮には途方もない数の女たちがアトラスの寵を得る為にひしめいていあのである。

またアトラスは残忍な性格であった。
どんなに気に入った女でも気に入らないことがあると瞬く間に打ち捨てる。

高貴な出自の姫であろうとだ。


配下に下げ渡すのはまだ良い方で酷い場合は切り殺し首を城下の広場に
晒すこともある。


恐ろしい王であった。


そんな王が小国バイエルの王女リンダリアに恋したのはまさしく運命と言っても良い。
熱病に浮かされたようそわそわし、膨大な贈り物と婚姻の申し込みの使者を送る。


王の頭の中には寝ても覚めてもリンダリア姫の姿しか頭になくその間
無闇な殺生や暴力もなかった。


大臣や貴族、民たちはそんな王を歓迎しリンダリアが嫁いで来ることを
願った。








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