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華の王妃
第3章 恋する人

アトラスのように欲望を剥き出しにしてくるでもなく、コーラスのように熱く何かを
訴えてくるでもない。
リンダリアを見つめる様子は湖のように澄んでいてどこまでも優しかった。


「そなたはまだ子供。大人になる日まで大切に慈しみ導こう。」


美しく優しい王太子。


兄のように慕わしく寄り添えるような御方。
それは恋と呼べるようなものではなかったかも知れない。
けれどリンダリアの心に小さな何かを灯してくれた存在だった。


「属国で反乱が起きた。父王の命で鎮圧に行かねばならぬ。
急ぎ帰国の途に着かねばならぬが。」


”落ち着いたらすぐさま、そなたに会いに来よう。”


朝焼けの中、旅装束を身に纏った王太子は国へと帰って行った。


吟遊詩人の詩のようにほんの一時の夢のような日々だったけれど
すぐに嫁ぐようなことにならなくてホットした自分がいた。


美しく優しい方だった。


けれど私は怖いのだ。


男性の視線が。


アルゴスの王のような目で見られるのが。


何もかもさらけ出されるようなあんな恐ろしいことを。








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