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華の王妃
第1章 プロローグ
生まれた御子は王の世継ぎとなる筈だったかも知れない王子だった。
大きな白絹に包まれた御子は早すぎた誕生のせいか生命力もなく
産声を上げたのが奇跡だったらしい。
王は止める女官を押しのけるようにして強引に産室に入ると御子に目もくれず
真っ先に妃の枕辺へと進む。
女官たちは涙をぬぐいながら見苦しいものを片付けると王が恐ろしいのか
早々に部屋の隅へと控える。
アトラスは蒼白な顔をして泣きじゃくる妃の手を握ると汗で張り付いた金色の髪を
優しい手つきでよけてやる。
「泣くな!子はまたすぐにできよう。」
「和子・・が・・大切な・・ 」
妃はユリウスに抱かれた子に手を伸ばす。
「動いてはなりませぬ。血の道がさわぎましょう。」
「でも、でも・・」
必死に手を伸ばそうとする妃の身体を押しとどめ王はユリウスに御子を
連れて行くように命じる。
「和子・・・・・ 」
狂ったように泣きじゃくる妃の上に覆い被さると
「諦めよ!体に障るではないか!和子は俺の王子として立派な葬儀を行うゆえ
なぁ姫よ・・・」
リンダリア・・よ・・・
少女のような妃を愛し気に呼ぶアトラスの声は妃に認識されることなく
気を失うように寝台に沈みこんだ。