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華の王妃
第8章 女官長
「そなたを王妃に迎えたらどうかと申す者も出た。ばかばかしい。
俺はそなたをそういう風に見たことはないし思ったこともないわ。」


その日は珍しく後宮には足を延ばさずマールを前にして自ら酒を注いでいる
王はとても機嫌が良くマールを前に政策の話や他国の様子などを聞かせてくれた。


「確かにこういう話を出来る女はそなたくらいな者だがな。
惜しいことにそなたに欲望を感じぬのだ。」


あからさまな王の物言いに、まぁと目を見開き頬を紅潮させるマールに
王はにやりと笑うと


「そなたもそんな女のような顔が出来るのだな」


と言った。


「恐れながら仰っている意味がわかりません。」


まじめな様子のマールに王は高笑いすると王はごくりと酒を飲み干す。


「言い方が悪かったな。俺はそなたを後宮の女どもと同列に扱う気はないのだ。
あれらは替えが効くがそなたは効かぬ。その意味がわかるか?」


「おれはそなたを信頼している。どの女どもよりもな。だからそなたを欲望や
子を儲ける道具にしたくはないのだ。」


「王・・・ 」


「そなたを王妃にと言う声もあるが、残念なことに俺には意中の女がいる。
俺はゆくゆくはその女を王妃に据えたいと思っているのだ。」


「王がゆくゆくと仰せになるのは身分低い方なのでございますか?」


「いや、他国の王女だ。美しさも愛らしさも申し分ない。だがまだ幼く
流石の俺も王妃にするには忍びないのだ。俺はこの通り精力盛んだからな。
子供のような王女ではすぐに壊してしまいかねん。」


「まぁ、王がそのように仰るなんて幸せな王女様ですこと。」


「ははは。そうか?だからな、ゆくゆくは後宮は閉鎖させる。それゆえ
そなたをそんなところに置いては勿体ないであろう?」


「光栄でございますわ。」


「そなたにはゆくゆくは王妃付きとなって欲しいと思っておる。
王妃を助け生まれて来る子供たちを育て教育して欲しい。」



俺は王妃を常に愛でていたいのだ。
だから王妃に子育ては無理であろう?


マールの前で楽しそうに笑う王の笑顔に陰りはなく王妃への愛に満ちていた。

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