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華の王妃
第8章 女官長

王妃の幸せか。
いつも悲し気な顔した王妃しか見たことがない。
笑うと言うことを忘れてしまったのだろう。
ユリウスの前でもせいぜいほんの少し笑みを浮かべる程度だ。
この上本当に王の御子でも孕んだら今度こそ絶望の淵に落ちてしまわれる
かも知れない。
かと言って世継ぎを孕まなければ王妃と言う地位を盤石のものには出来ない
だろう。
世間的には王妃がルーカスの王妃であったことは未だ内密のままだ。
知っているのは重臣たちだけで。
とうに滅んだ国の王族の血を引く姫と言う何ともありそうでいてありそうもない
話を世間はそのまま鵜呑みにしてしまっている。
実際後宮にはそういう姫は幾人もいたし、アルゴスは比較的新しい国なので
それほど高貴な血筋だの血統などに拘ってはいない。
畏怖と恐怖の対象である王が据えた王妃に表立って文句を言う愚か者は
いないだろうが、不死でない王の治世は永久的ではない。
もしも王妃を残して逝くことになれば残された王妃に真に頼るべき後見は
無いに等しいのだ。
王妃に乞われこっそりと身体に害のない孕みにくくする薬湯を処方しているが
真に王妃のことを考えれば良くない行為になる。

