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サイレントエモーショナルサマー
第9章 その薔薇の色は、

隼人の奴め、なんてことをしてくれたのだ。あらゆる手を尽くしても隼人が付けたキスマークは薄くすらならなかった。どれだけ強く吸ったんだあの野郎。

ブラジャーを付けても隠せない位置のそれを見られないようにするには襟ぐりの広い服は避けなければならなかった。

藤くんがこの痕を見たらどんな反応をするだろう。この間のように無理やり押し入ってくるのだろうか。それはそれでいいと思う相変わらずの私がいる。それともお仕置きだとか言って挿れてくれないのだろうか。あり得る。

はぁ、と溜息を吐きながら会社のエントランスを潜り、フロアへと向かった。そろそろ禁欲を強いられる週に突入する。その前にもう一度藤くんとセックスをしたいのに。

「月曜の朝から吐く溜息にしては深くないですか?」
「ひっ…!」

自分のデスクにつき、PCを立ち上げているとふっと耳に息をかけられた。驚いて立ち上がればにやにや笑った藤くんが立っている。

「…あのねえ、」
「大丈夫ですよ。誰も見てないし」
「そういう問題じゃないでしょう」

藤くんを諌めながら席に座り直すと、にやにや笑いのままの彼は流れるように浩志の席に座った。キャスターをフル活用して私の座る椅子にくっつかんばかりに寄ってくる。

「浩志にぶっ飛ばされるよ。あいつ、自分の席使われるの嫌がるから」
「ぶっ飛ばされたら優しく慰めてくださいね」

腰を抱こうと腕を伸ばしてくると同時にフロアの入り口に浩志の姿が見える。あ、と声をあげればやや遅れて藤くんもそれに気づいた。

だが、もう遅い。
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