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サイレントエモーショナルサマー
第10章 強制エンカウント
落ち着かない。今にも壊れそうな音を立てて複製を吐き出していくコピー機の前に立ちながらもぞもぞと身体を動かす。会社にいる間は基本的に仕事に集中できるタイプだった筈なのだが、どうにもこうにも落ち着かない。
「都筑さんのそれ、彼シャツってやつですか?」
「……はい?」
声の方を振り返る。藤くんと同期入社のミヤコちゃんがにこにこと立っていた。今日もばっちりメイクとヘアセットが決まっている。大きな花柄のワンピースも可愛らしい。
「なんかゆったりしてるみたいだからそうなのかなーって思って」
「あ、はは…えーっと、」
そんなことないよ、自分で買ったの。サイズ失敗しちゃった、とかその程度の嘘などつけばいいのに何故浮かぶ言葉は口から出ていくことを拒むのだろう。
「それに今日メイクも薄めですよね。月曜からお泊まりしてきたんですか?」
君はデリカシーと言うものをどこかに忘れてきたのか。苦笑いを返してミヤコちゃんに向けていた視線をコピー機へ戻した。
落ち着かないのは藤くんのシャツを着ている所為ではない。そのシャツの下のタンクトップは首元もあまりゆとりのないタイプでうっかりキスマークが見えてしまう心配もない。原因は、昨日と同じガウチョパンツの下、股間を護る彼のボクサーパンツにある。
視覚をいつも以上に刺激されたセックスで、私たちはいつの間にか眠ってしまっていた。目が覚めると7時を優に過ぎていて、化粧も落とさず寝てしまったし、下半身もそのままだったので酷い有様だった。