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サイレントエモーショナルサマー
第10章 強制エンカウント
「……かに、ください…っ」
「聞こえねえ」
「…うぁ…っ…」
早くしろとばかりに一突き。閃光が走って晶の顔が見えなくなる。
「…なかに、ください…っ…も、イかせ、…、あぁッ!?」
「おせーよ」
「あっ、んんッ…んっ…」
「志保」
「きもちいい、きもちいい…っ」
出る、とか、出すぞ、とかそう言った類のことを晶はあまり言わない。無言で強く腰を押し付けると、大量の欲を私の中に放つ。
余韻を味わうようにぐるりと中を掻きまわして手首のネクタイを解く。力が入らない。身体を起こしているのがつらくて晶の胸に倒れ込んだ。
懐かしい匂いがする。彼が好んで使っていた珍しい香水の香りだ。
「お前手放したのは惜しかったんだよな。ああ、結婚してやろうか。籍はいれねーけど内縁の妻ってやつ?あの頃俺と結婚したいって泣いてただろ」
くたばれ。あの頃の私は唯一無二の幸福が晶との暮らしの中にあると錯覚していただけだ。ずっと一緒に居て、結婚して、と言った次の日に荷物を纏めて出ていった人間を今でも変わらず愛している訳がないだろう。
確かに晶は亡霊になっていた。だが、愛だの恋だのを完全に遠ざける決め手になったのは彼の存在だけが理由ではない。
上から降りるように命じると身支度を整える。せめて拭き取ろうとトイレットペーパーに手を伸ばせば晶はその手を強く掴む。
「そのままどっかの男のパンツ穿いて帰れよ。出来るよな、志保。お前はいい子だもんな」
「……っ…」
「痛かったろ。ごめんな、でも、お前はこっちの方が喜ぶから。俺だって優しくしてやりたいよ」
「晶…、」
「愛してる、志保。ほったらかして悪かった。お前には俺しかいないし、俺にもお前しかいないよ」
私は、晶のことが好きだった。晶が居なくなればこの世界が終わってしまうと思っていた。だが、彼が去った後も世界は終わらなかった。
言葉通り、私を犯して、嬲った後、彼はいつも優しいことを言う。私の全身を丁寧に舐めて、こんなことをするのはこの世で俺しかいない、とも言った。
私を従順にさせるための甘言だったのだ。この人はただの嘘つきだ。
「…くそ、こんな時に誰だよ」
初期設定のままの着信音が鳴り響くと舌を打って自分の鞄を開く。スマホを取り出しながら拾い上げた藤くんのパンツを私に突きつけるのも忘れない。