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サイレントエモーショナルサマー
第11章 平穏か、あるいは、
初めては好きな人と、思い出に残る場所で。そんな風に初心なことを言っていた時期が私にもあった。
今は見事にどうしようもない女に成り下がっているが、初めて出来た彼氏とは高校生の頃の2年間付き合っていたけれどキスをするだけでセックスはしなかった。
別々の大学に進学後、新生活に馴染もうと毎日を過ごしている内に段々と疎遠になり気づけば彼との関係は終わっていた。
それでも、私の新生活は色鮮やかだった。講義の合間に新しい友人と遊びに行ったり、夏休みにはチカと旅行にいったり、チーズケーキの美味しい小さな喫茶店でアルバイトをしたりと平凡ながら楽しい毎日だった。
ありふれた日々に最初に差した影は、大学2年の夏、両親との死別だ。その頃の記憶は酷く曖昧で思い出そうにもただ、毎日を呆然と過ごしていたことしか思い出せない。
チカの支えを受け、ゆっくりと、ゆっくりと時間をかけて日常に戻っていった頃だ。晶と出会ったのは。