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サイレントエモーショナルサマー
第11章 平穏か、あるいは、
他人の目から見てこうもバレバレの恋慕をストレートな言葉で本人からぶつけられながら、何故、本気ではないなどと高を括っていたのだろう。ごめんよ、藤くん。
「てか、藤くんってあそこ小さそうじゃないですか?腰とか細いしそのまま細そう」
「確かに!しかも早そうですよね!」
「ぶっ…!」
いやいや、君たち。藤くんはとんでもねえ巨根だよ。普通の女の子だったら入るかも際どいし、入ったとしてもかなり痛いだろう。その上、遅漏絶倫というおまけつきだ。もっと言うとセックスの後に己のパンツを私に穿かせたがる奇妙な癖を持っている。
「は、はは…そ、想像力豊かだね」
やっと話題は転じたが、あろうことか男のイチモツはどの程度が理想的かという話になった。なんてこった。私はそこだけは素直に三拍子揃っているのが好きだと答えた。
「…私が誘ったのにご馳走になっちゃってすみません」
「いいのいいの。年上なんだから出させてよ」
「もっと都筑さんの恋の話聞きたかったんですけど、なんか予想外の話になっちゃいましたね」
デザートにみたらし醤油のバニラアイスとやらを4人で食べて店を出た。ミヤコちゃんは言葉通り些か予想外といった感じで頬を掻きながら私の隣を歩いている。駅に向かって前を歩く森さんと成瀬さんはなんだかハイテンションでついていけない。
「みんなと違って出来るような恋の話ないからなぁ…」
「え?それって恋したことないってことですか?」
「いや、まあそう言うわけじゃないんだけど…」
「じゃ、今度聞かせてください。あ、私こっちなんで。ご馳走様でした。また明日」
どうやら違う路線の駅を使っているらしく、ぺこりと頭を下げるとミヤコちゃんは去っていく。いつの間にか森さんと成瀬さんの姿も人波の中へと消えていた。
「……疲れたな」
心の底からの呟きは暗くなった街が吸い込んだ。