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サイレントエモーショナルサマー
第11章 平穏か、あるいは、
ダメだ、藤くんを話題の中心から遠ざけたい。彼のことを考えると身体を這う熱を思い出してしまう。
どうにか話題を変えたいのに女子同士での飲み会が久しぶりの私に提供できるネタはない。開けっぴろげにセックス事情を話すわけにもいかなかった。
苦笑いを浮かべ続ける私にお構いなしで、森さんと成瀬さんは藤くんの話題に夢中だ。
「あ、あのさ…素朴な疑問なんだけど藤くんのどこがそんなにいいの?やっぱり顔?」
遠ざけよう遠ざけようと意識し過ぎていた所為なのか、私の口から飛び出したのは藤くんに関することだった。
「そりゃー顔ですよ。顔もいいですけど、優しさがスマートなとことかもいいですよね、ね、森さん」
「そう!重いもの運んでたらさり気なく持ってくれたり、エレベーターのドア開けて待っててくれたり」
「ええ…それくらいなら浩志も出来るよ。そんなんでいいの?」
「そんなもんですって。ちょっとした優しさできゅんとなっちゃうのが女子ですよ!」
「……やっぱり私、女子じゃないのかもしれん」
エロスを感じないときゅんとしない自分を否定されたような気持ちになった。しかもきゅんとくるのは胸ではなく下半身だ。
「でも、藤くんのなにがいいって一途なとこですよ」
「…一途?」
「藤くんっていつだって都筑さんのこと見てますよ。そういう時、藤くんはいつも凄く優しい顔してます」
唐突な森さんの発言に、断りを入れて吸おうとしていた煙草が指から落ちる。
「都筑さんのこと本当に好きなんだなって感じます。だから藤くんは王子様だけど、憧れ?みたいなもので恋愛の対象じゃないんですよ」
「観賞用のイケメンってやつですよね」
森さん、君はさっきから立て続けに随分とでかい爆弾を放ってくれるじゃないか。ミヤコちゃんも黙って聞いていたくせに、よく言った!みたいな顔をしているのはどういうことだ。