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サイレントエモーショナルサマー
第13章 confusione
「…チカの家がいい」
「今年の私にはやっと昨日手を繋いだ彼が居るんだわ。あんたばっかりかまけてらんないの」
触れていた手が強く膝を叩いた。いてーよ。じろりとチカに目をやって新しい煙草に火を点ける。やっぱりチカはちょっと冷たいくらいが彼女らしい。
「例の彼、大丈夫?チカを傷つけるような人じゃない?」
「ありがと。大丈夫よ、この間話した通り、私の気持ちを落ち着けてくれる優しい人」
「そっか。良かった」
ほっとすると同時に凄いな、とも思う。恋愛で追い詰められて、傷ついて、それでもなお乗り越えて新しい恋をしようとするチカはとても輝いて見える。逃げて遠ざけてきた私とは正反対だ。
「私の時間、ちゃんと動き出したよ。あんたの止まってた時間もちゃんと動き出す。今だよ、志保。今なら晶はもう亡霊じゃなくなる。今度こそ魔法が解けるの」
「魔法、か。どっちかっていうと呪いじゃない?」
「よし、じゃあ呪いでもいい。とにかくあの頃から時間が止まって大人になりきれてないあんたはもう、進めるようになる筈だよ。手助けはする。だから、逃げないで進んでごらん」
確かに、そうだ。私はよく分からぬまま囚われて、頭でっかちになって感情の成長を止めてしまっていたのだと思う。
目の奥がつんと熱くなって俯いた。チカから表情を隠し、ゆっくりと瞼を閉じる。
頭の中、浮かんだ優しく笑った顔は―――、