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サイレントエモーショナルサマー
第14章 fantasma
週明けはまたも雨で始まった。気温が高くじっとりと湿った心地悪い雨だった。月曜の夜は浩志とお気に入りのイタリアンを食べに行って、火曜日はデスクで親子丼をかっ込んだ。この二日はなんとか自宅で眠ることが出来た。だが、そろそろ眠れぬ夜がやってくる。
◇◆
生々しい話をすると月経が終わったなと判断した瞬間の昂揚感が結構好きだったりする。これまでだったら今日はナンパに着いていくのではなくこちらから仕掛けようとうきうき下着を選んでいたが、今の私は違う。藤くんという極上の素材が手に届くところにあるのだ。
ふんふん、とご機嫌にクローゼットの中を改める。うん、今日はスカートにしよう。それか滅多に着ないワンピースにしようか。あれこれ引っ張りだしながら結局柔らかい素材のプリーツスカートと、それに合わせたトップスを選ぶ。
普段よりも大きめの鞄に着替えを詰め込んで外に出ると私の昂揚に比例したような美しい青空に目が眩んだ。
*
「おはようございまーす」
「お、都筑。いいところに」
一度、フロアに顔を出しすぐさま朝会の行われる会議室に移動しようとすると部長に捕まった。普段はあまり言葉を交わさない人に朝一番で捕まるとはなんだか嫌な予感がする。
「お前、今年の暑気払い幹事やってくれ。あ、あと夏休みどこで取るか早く決めろよ。決めてないのあとふたりだから来週以外ならどこで取ってもいいぞ」
言うだけ言って、じゃ、朝会行くぞと去っていこうとする部長を呼び止める。夏休みはともかく暑気払いの幹事だと?それは翌週の金曜に開催が決まっているのではなかったか。
「暑気払いの幹事は一年目の仕事じゃありませんでしたっけ?居るじゃないですか」
「お前、中途だからやったことないだろ。若いの使っていいからやってくれ。通過儀礼だ」
「は、はあ…」
「ああ、藤が居るだろ。あいつ去年やってるから藤に色々聞くと良い」
よろしく、とゴリラのような顔を輝かせ部長はひらりと去っていく。