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サイレントエモーショナルサマー
第17章 ricordo
何故、そこに行きつくのかは理解不能だ。浩志とは友達で、セックスは愚かキスすらもしないし、この先するつもりもないというのに藤くんはその点を頑なに納得しない。

「行くところがなくなったらいつでも来てくださいね」
「……私と会社でも家でも一緒に居るの嫌じゃないの?」
「幸せすぎて涙が出ます」
「……そっか、なんか、ほっとした」
「じゃ、そろそろ触っていいですかね」
「あ、明日は会社だと言うことを念頭に置いてお願いします」
「かしこまりました」

待ってました、と触れる手に、唇に、身体を委ねる。もし、藤くんと出会ってなかったら、藤くんとセックスをしていなかったら、私はこれまで通りの生活をして生きて、死んでいっただろう。

でも、この出会いには晶との暮らしや、傷つけてしまった人との未熟な恋が作用している。

愛だの、恋だのを遠ざける原因になった2人が居なければ私はきっと藤くんのここまでの深い愛情を知る機会を持たなかったかもしれない。
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