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サイレントエモーショナルサマー
第17章 ricordo
「藤くんが私のこと好きでいてくれるのは分かった。だけど、私はまだそれに応えきれないで、あなたに一方的に甘えようとしてる。でも、多分変われる気がしてるの。今年こそ変われるって思うようになったから、もうちょっと待って。ね、お願い」
「……分かりました。でも、夜眠れないって大丈夫ですか?昨日はすやすや寝てましたよ。ま、気絶してですけど」
「ああ、うん。誰かいれば眠れるし…友達のとこ泊めてもらうから」

私にばかりかまけてられないと言ったチカの顔を思い浮かべながら言う。彼女に泣いて縋っても、あんたには藤くんが居るでしょ!と突っぱねられる気がする。

「中原さんですか?中原さんのとこ泊まるなら家に来てください」
「で、でもさ、ほら、恭平くんと飲みにいったりしたいでしょ。あと、一人になりたいとかさ、」
「あいつと飲みに行くくらいなら志保さんと一緒に居たいです」
「友達は大事にしなさい。いっそ恭平くんを私だと思って、」
「勘弁してくださいよ。あいつは俺の女神を汚した野郎ですよ」
「うーん…君の女神は既に真っ黒に汚れているんですよね」
「俺が浄化します」
「藤くんってほんとポジティブ荒っぽいよね」

どういう生き方をしていればその思考回路になるのかちょっと興味を持った自分に驚く。誰がどうやって生きてきて、どんな物事の捉え方をするのかなんてどうでもいいことだったのだ。

「…まだ、ふらふらしててもギリギリ許しますけど、変な男に引っかかっちゃダメですよ」
「藤くんさ、私が他の人とするの嫌じゃないの?」
「嫌ですよ。嫌ですけどそうやって縛り付けたら志保さんどっかいっちゃいそうだし」
「……いっちゃうかもしんない」
「ほら。だから、どうぞ好きにしてください。他の男であなたが満足すると思ってないんで。なんなら比べてください。俺はもう志保さんの身体は手に入れたと思ってますから」
「…随分と余裕なご様子で」
「余裕じゃないですよ。俺はね、今、中原さんを恐れてるんです。中原さんは志保さんの気持ちを持ってます、志保さんが中原さんとまでセックスしちゃって、中原さんとの方がいいってなった日には俺は敗北決定ですよ」
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