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サイレントエモーショナルサマー
第3章 檻のなかの土曜日
― 好きだよ、愛してる。
嘘つき。そんな言葉はいらない。あなたは私に背中を向けてしまうじゃない。あなたになんて出会いたくなかった。出会わなければこんなことにはならなかった。
消えてくれ。もう、顔も思い出したくないのだ。私の名前を呼んで、愛を囁いた声だって忘れてしまいたい。何年たっても褪せないなんて酷い拷問。きっとあなたは私のことなんて忘れてしまっているのに。
「…!」
目を開くと見慣れない天井が広がっている。息が荒い。嫌な夢を見た所為だ。ごろんと寝返りを打ってみるとシングルベッドに家主の姿がない。
掛けられていた布団を捲ってみれば後処理は彼がしてくれていたようだ。壁の時計を見上げると14時を少し過ぎている。気絶してそのまま眠りについたのは明け方のことだった。最低でも8時間はぐっすり眠っていたことになる。
「やっちゃったな…」
藤知晴という男を見誤ったのが悔やまれる。2度目の射精前には俺のこと好きになってくれなきゃイかせてあげないと恐ろしいことを言われたことを思い出し、ぶるりと身体が震えた。あの時は、やだやだと駄々を捏ねてキスをしてやっとイかせてもらったのだった。