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サイレントエモーショナルサマー
第18章 ferita
恋愛は億劫で面倒だ。それに愛のないセックスの方が気持ち良い。男性の恋愛的な好意をそれまで以上に気味悪く感じるようになり、まともな恋愛というやつからはとにかく逃げた。

二社目の会社は確か数か月とかそこらで辞めた。都筑は誰とでもヤるらしいと噂が流れたからだ。その時点でセックスは好きになっていたが、相手を選ばない訳ではなかった。

生理的に気持ち悪いと思う人とは乱暴にされようが、大事にされようが気持ち良くなかったのだ。噂を盾に気色悪い年配の社員からも迫られるようになり、やってられるか、とさくっと辞めた。



その後、現在のマンションに引っ越し、2度目の転職活動をしながらハンティングは続けた。隼人と出会い、今の会社に入り、不思議と浩志と親しくするようになった。

弾けてからの私は浩志と出会う前まで男性を見ても、性癖やイチモツの具合にしか興味を持ったことがなかったが、何故か、浩志にはそういった関心を持たなかった。気を許してはいけないと思う暇もなく、浩志は私にとって性別を超越した存在になった。



「…先程からずっとギムレットですが、なにか意味でも?」

ふと響いたバーテンダーの声に顔を上げる。曖昧に微笑んで、おかわりを頼みながら煙草に火を点ける。

「過去に、別れを告げようかと」

恨んで、逃げて、どうなったっていい、と適当に生きてきた自分とは決別しよう。私は今ならやっと前に進むことが出来るだろう。
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