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サイレントエモーショナルサマー
第20章 voce
さも当たり前のように言われ、泣き出しそうになった。藤くんはこんな私相手でも根気強く付き合い続けてくれるのを感じたからだ。
外出はちょっと気乗りしないけれど、今までどおりはもう辞めよう。少しずつ藤くんの見る世界を探っていくのもきっと悪いことじゃない。
「無理はしなくていいんですよ、楽しくないならそう言っていいんです。俺は志保さんに笑ってて欲しいから」
「…ありがとう」
「明日どこ行くかは明日になってから考えましょうか」
「うん」
「…俺もう今日厳しそうなんでシャワー浴びて寝ましょう。物足りないなら部長と中原さんを恨んでくださいね」
瞼にキスをして藤くんはベッドから出ていく。廊下へと消える背を見送りながら、私は三井さんと会っているとき、無理をしていたんだろうなと思った。楽しくないと感じることが悪いことだと考えていたのだろう。私は本当に人と向き合っていくことが下手くそだったのだ。