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サイレントエモーショナルサマー
第20章 voce
「あっ…あっ…んぁ…っ…あァ…っ…!」
「志保さん、こっち見て」
「んんっ…藤くん…っ…」

視界が白く弾け飛んで藤くんの顔がぼやける。いやだ。もっと、藤くんの顔を見ていたい。なんとか手を伸ばすとその手に藤くんの手が触れた。絡み合う指の熱が、ああ、そうだ、愛おしいのだ。

ずん、と奥までの強い衝撃で身体が一際大きく跳ねた。脱力した腕がシーツへ落ちる。深く息を吸い込むと苦しげな声を漏らした藤くんが倒れ込んでくる。どくんと中でモノが脈打つのを感じながら藤くんの背中へゆるゆると手を回す。

「……はぁっ…、志保さんの中、すげーきもちいい」
「ん…っ…」
「くそ…ゴリラに飲まされなきゃ幾らでも出来たのに…」

悔しそうに言いながらゆったりとモノを引き抜いて簡単に後処理をする。ベッドに横になった藤くんの腕の中に擦り寄って、胸元にキスを落とした。

「……飲み過ぎるなって言ったのに」
「中原さんが逃げたからですよ。俺はあの人の分まで飲まされたんです」

ずるいんだよな、あの人と、ぼやきながら私の髪を撫でる。どうやらあの大量のアルコールは持続力には影響がなくとも回復力に多大なる影響を及ぼしているらしい。本人もそれが納得いかないのかちょっとふくれっ面なのがなんだか可愛い。

「志保さん、明日、おでかけしましょうか」
「……どこに?パン屋?」
「えーっと、パン屋でもいいですけど…どこか行きたいところないですか?ほら、買い物とか」
「うーん…」

行きたいところを問われてつい黙り込んだ。今のような状態になってからどこそこへ行きたいと思うようにはならなくなっていたのだ。

元々、人の多いところは苦手であったし、気が付いたら同世代の女性と話すのもなんだか窮屈に感じるようになった。人混みの中にわざわざ出かけて行って疲れるくらいならセックスで疲れたい。

素直にそれを言うと藤くんは呆れたように笑って口を開く。

「じゃあ、一緒に他にも楽しめること探していきましょう。この世界には楽しいこともっとたくさんありますよ。小さくなってるのは勿体ないです」
「一緒に?」
「そう、一緒に」
「もし、さ、私の反応悪かったらどうする?」
「その時はまた違うこと探します」
「それでもダメだったら?」
「んー1回セックスで志保さんのご機嫌を取ってまた連れ出します」
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