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サイレントエモーショナルサマー
第21章 futuro
楽であることと楽しいことの間には厳密にいうとかなり隔たりがあると思う。私は適当に楽に生きては来たが、諸々弾け飛んでからの人生というものを楽しんでいたかと問われてみると、はい、とは答えられない。
では、楽しいとはなんなのだろう。藤くんは私と一緒に居て楽しいと感じてくれているのだろうか。
「どうしたんですか?俺の顔、なんかついてます?」
「ん、チーズケーキの破片がここについてる」
自分の口元を指さしながら言うと、藤くんは取ってとばかりに私の方へ顔を寄せた。指を伸ばし僅かな欠片を取ってやると彼は躊躇なくその私の指を食む。
朝は9時ごろに目覚めた。そこから簡単に朝食を取って洗濯をして、悩みに悩んで一般的なデートスポットに繰り出してみたものの昼過ぎになり歩き疲れ、カフェに落ち着いてケーキを食べている。ちなみにこのケーキを食べる前に藤くんは馬鹿でかいサンドイッチをぺろりと完食している。
「藤くん、今、楽しい?」
「楽しいですよ。志保さんは?」
「正直言っていい?」
「もちろん」
「楽しいのかどうかよく分からん」
「うーん。じゃあ、今すぐ帰りたいですか?」
「ううん。もうちょっと藤くんと歩いてたい」
「なら、それでいいです。その内思い出していきますよ」
藤くんはにこっと笑って言うが、かなり自信がなかった。高校生の頃はさておき、晶と暮らしていた頃はそれなりに行きたいところもあれど基本的に晶の機嫌を窺いながらの外出であったし、三井さんと一応は付き合っていた頃も、どこそこに行きましょうと言われ出かけて行って次第に疲弊して帰宅するばかりだった。
それに比べて藤くんと慣れない街を歩くのは気が楽だ。私の歩幅に合わせてゆっくりと歩きながら、ふらふらと色んな店に入って、これがかわいいだの、志保さんに似合いそうだのとはしゃいでいる。その姿を見ているとほっと肩の力が抜ける。
では、楽しいとはなんなのだろう。藤くんは私と一緒に居て楽しいと感じてくれているのだろうか。
「どうしたんですか?俺の顔、なんかついてます?」
「ん、チーズケーキの破片がここについてる」
自分の口元を指さしながら言うと、藤くんは取ってとばかりに私の方へ顔を寄せた。指を伸ばし僅かな欠片を取ってやると彼は躊躇なくその私の指を食む。
朝は9時ごろに目覚めた。そこから簡単に朝食を取って洗濯をして、悩みに悩んで一般的なデートスポットに繰り出してみたものの昼過ぎになり歩き疲れ、カフェに落ち着いてケーキを食べている。ちなみにこのケーキを食べる前に藤くんは馬鹿でかいサンドイッチをぺろりと完食している。
「藤くん、今、楽しい?」
「楽しいですよ。志保さんは?」
「正直言っていい?」
「もちろん」
「楽しいのかどうかよく分からん」
「うーん。じゃあ、今すぐ帰りたいですか?」
「ううん。もうちょっと藤くんと歩いてたい」
「なら、それでいいです。その内思い出していきますよ」
藤くんはにこっと笑って言うが、かなり自信がなかった。高校生の頃はさておき、晶と暮らしていた頃はそれなりに行きたいところもあれど基本的に晶の機嫌を窺いながらの外出であったし、三井さんと一応は付き合っていた頃も、どこそこに行きましょうと言われ出かけて行って次第に疲弊して帰宅するばかりだった。
それに比べて藤くんと慣れない街を歩くのは気が楽だ。私の歩幅に合わせてゆっくりと歩きながら、ふらふらと色んな店に入って、これがかわいいだの、志保さんに似合いそうだのとはしゃいでいる。その姿を見ているとほっと肩の力が抜ける。