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サイレントエモーショナルサマー
第21章 futuro
ケーキを食べて少し休んでからまた歩き出す。休日のショッピングモールはやはり混雑していて、冷房が効いていても外より熱気があるように感じた。

手を繋いで歩いていると藤くんがふと立ち止まった。なに?と問いながら顔を見上げればにやにやと笑っている。

「あそこ、入りましょっか」

にやにや笑いで藤くんが指さした先には割かしセクシー路線なランジェリーショップだった。う、とたじろいで首を横に振るも繋いだ手を引いて店へ入っていく。

「藤くんさ、恥ずかしくないの?」
「いえ、全く」
「女性物の下着の店だよ。居心地悪くないの?」
「恥ずかしそうにしてる志保さん見てると物凄く楽しいです」

普通は逆だろう。何故、私が恥らって藤くんが上機嫌になっているのだ。ショッピングモール内にあるだけあって飛びぬけて過激な下着は少ないが、布面積の少ないものが目を引く。

パステルカラーやなんやらでエロさを緩和しているだけで守りに入れなさそうな小さなショーツはかなり際どい。

「Tバックいきましょうよ」
「しれっと言うな!」
「いや、今朝ね、志保さんの下着干してて思ったんですよ、あ、Tバックいいなって」
「…だからあんなにやにやしながら干してたのか」

今朝、洗濯物を干す際、私がやると言ったのに藤くんはその作業を頑なに私には譲らなかった。下着だって別に一緒に洗わなくて良いと言ったが、そこも押しに押され結局私が譲歩したのだ。

「俺のパンツ穿くのとTバックだったらどっちがいいですか?」

究極の二択だ。さりげなく私の腰を抱きながら、どっちにします?と追い打ちをかけてくるのは辞めて欲しい。下唇を噛んで逃げようとすると、ダメ、と甘い声がする。

「…こっちの方がまだマシ」
「こっちって?」

言わせる気か。感じるところ以外にも私が変なところで恥ずかしがるのももう分かっているのだろう。黙って指さすと耳元で、それじゃわからないですよ、と言う声は思わずぞくぞくしてしまう。
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