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サイレントエモーショナルサマー
第24章 guarigione
私は今、生まれてはじめての土下座をしている。
ごめんなさい、大変申し訳ありませんでした、と三つ指をつき、硬い玄関のフローリングに額を擦りつけている。
「…え?いや、この展開は望んでないんですけど…」
狼狽えた藤くんの声。どうしたんですか、と優しく問われ、しゃがみ込んだ藤くんが私の肩にそっと触れる。おずおずと顔を上げると藤くんは僅かに目を見開いた。
「泣きました?え、ちょっと…なんかあったんですか?」
「藤くんの見ていないところで藤くんではない人とセックスしてしまいました…」
「……はい?」
「ごめんなさい。ほんと、どの面下げて戻ってきたんだよって感じですけどとりあえず鍵預かっちゃったし…」
「えーっと…色々聞きたいことがあるのでとりあえず俺を部屋に上げてください。いっこずつ、聞きます」
はいはい、と促され立ち上がった。今日はあまり酔っ払っていないのかしっかりした足取りで、動きの鈍い私の背中に手を添えて居室へと移動する。
ぱちんと電気の点く音。はい、座ってください、と言われ並んでソファーに座った。
「………」
「こっち、向いてください。はい、俺の目見るの」
「……っ…」
「目、真っ赤じゃないですか。したくて、したんじゃないでしょう」
「……うん」
「ごめんなさい。一緒に居れば良かったですね」
「ちがう…藤くんは悪くないの…私の脇が甘かったというか…」
そっと抱き寄せられ、顔を藤くんのシャツに押し付ける。ゆっくりと髪を撫でてくれる手の感触が心地良くて、愛おしくて、また涙が溢れだす。
嗚咽交じりに、自宅に一度戻ったこと、隼人と晶にされたことや、その時感じたことをぽつぽつと話した。浩志とのことは話すことが出来なかった。
「ごめん…藤くん…ごめんなさい」
「俺はね、今、実は凄く驚いています」
「…へ?」
「だって、志保さんセックスしようって言われて、俺が嫌がることはしたくないって思ったんでしょ。こいつらはダメだって。それに、気持ち良くなんかなかったって」
「…早く終わって欲しかった」
「志保さんに無理やり酷いことしたやつらを正直ぶっ飛ばしてやりたいですけど、俺は今、それ以上に傷ついてる志保さんを見てほっとしてる自分をぶん殴りたいです」
だからもう自分を責めるのはやめてください、と私を抱き締める腕の力を強くする。