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サイレントエモーショナルサマー
第24章 guarigione
なんで、そんなことが言えるの。どうしてこんな私なんかのことを、そこまで思ってくれるの。
普通だったら、汚いとかそういう風に感じるのではないだろうか。触れたいとも思わない筈だ。
「優しくしないで…私、バカだからもっと甘えるよ」
「優しくするのも甘やかすのも俺の特権です。存分に寄りかかってください」
「……っ…」
「もう、泣くのはダメですよ。ごめん、もなしです。シャワー浴びて寝ましょう。ね、」
藤くんの身体が離れていく気配を感じてぎゅっとしがみついた。呆れたような声で笑って、もう少しだけですよ、と髪を撫でてくれる。
藤くんは優しい。藤くんはこんな私相手にも根気強く向き合って、見捨てないでくれる。藤くんともっとちゃんと向き合いたい。
そう、思うのに初めて見た浩志の涙が頭の中から消えてくれない。
恋愛は面倒で億劫だとずっと思っていた。でも、胸の奥から苦しくて仕方ないのに私は自分に向けられた愛情から逃げたくないと思った。
隼人と晶は論外だ。幾ら自称生まれ変わった私でもあいつらからは徹底的に逃げてやる。あいつらはなんだかんだ言いながら結局セックスしたいだけだ。
やつらが言った好きだのなんだのと、浩志と藤くんが言った好きは重さがまるで違う。
「藤くん、」
「はい、なんですか」
「キス、してくれる…?」
「俺がしないと思います?」
「……ちょっとだけ」
「いくらでもしますよ。大丈夫です、志保さんは汚れてなんかないです。もし、そうだとしても俺が浄化するって言ったでしょ」
藤くんってほんとにすごい。そう言った声は今までで一番か細く、震えていた。私が目を閉じるのも待たず、藤くんはキスをしてくれる。そっと目を伏せると、下唇を噛んで舌を絡ませる。
「…今日はもうおしまいです。はい、シャワー浴びてください」
促され、交代でシャワーを浴びて、藤くんは楽しそうに微笑んで私の髪を丁寧にドライヤーで乾かしてくれた。私も同じことを彼にしたけれど下手くそだったようで、首が熱いと笑われた。
一緒にベッドに潜り込んで、藤くんの腕の中で目を伏せる。もし、浩志だったら、と考えたことに気付き藤くんに気づかれないように小さくかぶりを振った。
久しぶりに夢を見た。川沿いの散歩道を誰かと手を繋いで歩いていた。こっそり見上げた横顔は――、