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サイレントエモーショナルサマー
第26章 viaggio Ⅱ
眩しさで目を開いた。しんと静かな部屋。ごわつく白いシーツ。ぱちぱちと瞬きを繰り返す。旅行に来てまで藤くんにイかされてそのまま眠ってしまったらしい。
藤くんの姿はなく、耳を澄ますと鳥の囀りがそっと聞こえてくる。のそりと起き上がれば私は全裸のままだった。指だけで何度イかされたのだろう。全く、藤くんは恐ろしい子である。耳元で響いた声を思い出すと下腹部は疼きを増す。やっぱりあの熱く硬いモノが欲しい。
彼は大丈夫なのだろうか。我慢の出来る男だと言っても3日も出していなければさぞかし辛いだろう。藤くんの性欲は彼の言葉通り私以上だ。
「どこ行ったんだろ…」
目が覚めて俺が居ないと寂しいんですか、と言っていたくせに。しゅんと息をついてベッドから降りる。なんと時刻は10時を過ぎていた。いつの間に眠りについたのかは定かではないが、恐らく明け方だっただろう。
空腹を覚えながらも昨晩はゆっくり入っていられなかった露天風呂を楽しもうかと浴室へ向かった。内風呂にも藤くんの姿はないがなんとなく私の持ってきたボディソープの香りがするような気がする。
もしや、と思い内風呂をそのまま横切り露天風呂へ続くガラス戸を押し開ける。
「…居た」
「あれ…もう目、覚めたんですか?読み違えたかな」
「読み違えって…藤くんは私の起床時間まで把握してるんですか」
「大体ですけどね。家だったらあの調子だと昼過ぎまで目、覚めないっていう読みでした」
紅色の湯船で心地よさそうな藤くんはにこりと微笑む。それを見て私はほっと胸を撫で下ろした。昨晩の辛そうな藤くんの顔がぼやけた頭の中にまだ残っていたからだ。
「気持ち良いですよ。入ります?」
「……辞めとく」
「悪戯しませんから」
「嘘だ」
「まあ、そうなるでしょうけど」
「ほら」
「……志保さんが入ってきてくれないと寂しいです」
ほう。君はそう言う表情も隠し持っていたのか。普段の彼がスキンシップ過多の大型犬だとするならば、今、湯船の中で胡散臭く悲しげな表情を作っている彼はチワワ的な小型犬を思わせる。
う、とたじろいで悩んでいるとざぶりと豪快に湯船から上がってきて私の手を取った。とうに見慣れた裸に湯の粒が滑っていくのがどうしようもなくセクシーに見える。