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サイレントエモーショナルサマー
第27章 dipendere
アラームの音でなく、すだれ越しの朝日によって目を覚ますというのは案外心地よい。7時ごろに目覚め、宿で朝食を取った。チェックアウトしておじさんの車で駅まで送ってもらったのは9時を少し過ぎた頃。
初日に参拝をした駅で一度特急を降り、観光客向けに開発された商店街をふらふらと見て回った。会社へのお土産はなくて良いだろうと藤くんは言ったが、私は一応たくさん入っているえびせんべいを買った。それからチカへの土産に犬の形のサブレと、少し迷ったが浩志が好きそうなお菓子も買った。
3日目の帰りの新幹線の時間は16時12分発だった。私が疲れて早く帰りたがるかもしれないとその時間に手配してくれていたらしい。別の意味で早く藤くんの家に戻りたかったので心の中で、グッジョブ、と喝さいを送る。
特急は相変わらず閑散としていて乗客もまばらだったが、新幹線は旅行客というよりもサラリーマンで混雑していた。私服姿の私たちはなんだか浮いて見えた。
夕飯はどうする?なんて会話もなく、私たちは欲情いっぱいで帰路を急いだ。無性にどきどきする私とは反対に、藤くんはいつも通りの表情だが、不自然に私の身体に触れようとはしない。
見慣れた藤くんの住む街の光景。時刻は19時近くで、歩く住宅街には各家庭の夕食の香りが満ちているようだった。
玄関に飛び込むなり、鍵をかける時間すら惜しんで、私は彼に口づけた。身体に回ってくる熱が愛おしい。
「……シャワー、浴びましょうよ」
「待てない」
「欲しがり」
「充分わかってるでしょ」
あなたも私を欲しがっているくせに。藤くんのシャツの襟元を掴んで、また唇を寄せる。口を薄く開けば彼の舌はその中に入ってきて、私の舌を絡め取る。漏れる吐息と布ずれの音。スカート越しに尻を掴む手のひらの感触。そんな布などさっさとはぎ取って欲しい。
「……俺、今日やばいかもしれないです。キスだけでイけそう」
「ダメ。そんなの許さない」
「志保さんのキスってめっちゃエロいですよね。このちっちゃい唇で一生懸命吸い付いてくるのはエロかわいいです」
「……そういうのいいから早くしよう」