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サイレントエモーショナルサマー
第27章 dipendere
「あのね、会話もキスも、ムードも全部大事な前戯ですよ。濡らして挿れてってそれだけじゃセックスとは言えないんです」
なるほど。藤くんの持論からすると私が今まで彼以外の人としてきたことはセックスではなかったことになる。だからか?だから、藤くんとのセックスが特別気持ち良いのだろうか。
「分かりました?はい、てことでシャワー浴びてください」
こくりと頷くと彼はそこで漸く玄関の鍵を締め、私の服を脱がせにかかった。服を脱がせながら何度もキスをして、やっぱりもう我慢できないとねだると彼は無言でにこりと笑って私を浴室へと押し込む。
私がシャワーを浴び終えて居室へ行くと藤くんはなんだか慌てているような様子だった。どうしたの、と聞くが、なんでもないです、と浴室へ消えていく。
― なんかやってたな…
またなにか策でも練っていたか。裸のまま藤くんのベッドに寝転がる。数日振りのほっと落ち着く匂い。やはり、藤くんのベッドのシーツは物凄く肌触りがいい。
鼻一杯に匂いを吸い込むだけで下腹部は熱を持つ。ああ、ほら、もう私は藤くんの残り香だけで興奮できるとこまできてしまった。シーツを撫でてうっとりしているとシャワーの音が止んで、浴室の戸が開いた気配。
起き上がってベッドに正座。腰にバスタオルを巻いた藤くんが居室に戻ってくる。両腕を広げればゆっくりと傍までやってきて、ぎゅうと抱き締めてくれる。
首筋に鼻先をうずめる。ボディソープの匂いが藤くんの匂いに勝っている。ううん、なんか違う。違和を払うようにかぷりと噛みつくと、強く尻を掴まれる。
「キス、してください」
藤くんがにこっと笑って、少し口元を突き出す。ちゅ、とソフトに口付けてからいつもと変えて上唇を噛んだ。舌を入れて、前歯から焦らすようにねっとりと歯を撫でていく。
「…やばいな。志保さん、やっぱりもう1回シャワー浴びてきてくれません?」
「なんで」
「男の事情です」
そんなの嫌だと言う代わりに藤くんの耳たぶを甘く噛む。もう、と力なく言って尻を掴んでいた手が背中を撫でた。