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サイレントエモーショナルサマー
第5章 カウント・ゼロ
「残念。都筑さんとの間接キス、藤に自慢してやろうと思ったのに」
にんまりと笑った顔。ピンク色のチークがよく似合う今時の女の子の顔だ。短めの前髪に丁寧に巻かれた淡い茶色の髪。こんな時間まで崩れてないなんて凄いな、といつも感心する。
これまでの藤くんの私への好き好き光線を目の当たりにしている彼女は会話の中で事あるごとに彼の名前を出してくる。
「相変わらず仲良いんだね。付き合ったりしないの?」
「あれは観賞用ですよ。付き合うとかそう言うのとは別物です。それに藤ってすっごく独占欲強そうじゃないですか?私はそういうのちょっと勘弁です」
にまにまとしていた顔はうんざりとでも言いたげに変化する。私は的外れなことを言ったらしい。仲の良さをアピールするようなことを言ったくせにやっぱり不思議な子だ。
仮に彼女の言った通り藤くんの独占欲が凄く強かったとしても私はそれを満たせないな、と思った。極上の食事ばかりでは飽きてしまう。時にはジャンクフードだって必要だ。ちょっと手を伸ばせば幾らでも手に入る。もし、彼がそれを咎めたら私はその時どうするのか。今は想像することすら出来なかった。
フロアに戻ってからコーヒーを飲んで仕事をこなし、業務後には浩志と焼き鳥屋で飲んでから帰宅した。