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サイレントエモーショナルサマー
第6章 slow-acting
股関節の痛みが消え去ると大人しくしていた性欲は私に狩りに出ろと要求してくる。いやいや待ちなさい。そんなものに出なくたって身近なところに獲物が居ることを忘れたのか。
点けっぱなしのテレビは朝のニュース番組を映している。昼頃から雨が降り出し、深夜まで続くだろうと気象予報士の声が聞こえてくる。
雨の日は私の狩りの成功率がぐんと上がる。肌寒さが人肌を恋しくさせるのだろうか。今日は藤くんを誘うことにしよう。下着姿のまま開け放したクローゼットの前に仁王立ちし、服を物色。仕事の時はオフィスカジュアルのパンツスタイルが多いが、セックスをしたい日はタイトなスカートを履くようにしている。
ネイビーのタイトめなレーススカートをひっぱり出し、トップスは白のシフォンブラウスをチョイスした。藤くん相手にガーターは狙い過ぎだろうと思ったのでストッキングにしておく。ジャケット片手に玄関の鏡で髪型を再確認。いってきます、と鏡に向かって呟いて家を出た。
性的な欲求があらぬ方向に弾けてしまっている私だが、ここ3年程は奥村隼人という青年と身体を重ねつつ、時々つまみ食いをすることで欲を満たしていた。
つまみ食いはナンパについていくか、こちらから仕掛ければ場を作ることこそ容易でも、拗らせた性癖までもを満足させるのは思いの外難しい。ホテルに入る前にモノを見せてくれという訳にもいかないし、こちらから道具のように扱ってくれと要求してそうしてもらっては私の場合意味がない。
選択を誤れば最悪なことも起こり得るが私がこれまで酷く乱暴にされずにやってこれたのは運が良かっただけだろう。そうなったらそうなったで自業自得だ。甘んじて受け入れる覚悟はある。