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サイレントエモーショナルサマー
第6章 slow-acting
今日は藤くんを誘おうと思い立っただけなのに見慣れた通勤時の風景が色づいて見えたのはなんだったのだろう。
*
私の所属している部署は水曜日に朝会という30分ほどの情報共有のミーティングのようなものが行われる。電話番の若手を1名残し、皆が会議室に集まるのだ。私が会社に着いて会議室に顔を出すと十数名の部員は殆ど集まっていた。
ホワイトボードの前に2名がけの会議テーブルが1列に4台、それが2列スクール形式で配置されている。皆に挨拶をしながら後方の空席に腰を下ろした。ちらりと見やった先、浩志はホワイトボードの近くに座っていた。
「……それ、誘ってるんですか」
少し遅れてやってきた藤くんはしめたとばかりに私の隣に座ると視線はスカートに向けて声を潜めて言った。ほうほう、効果があったわけだ。ほくそ笑んで藤くんの顔を見る。ばちっと視線がかち合うと太腿を触ろうとしてきたのでその手は流石に叩き落とす。
「気づいた?」
「…!幻聴ですかね、今までだったら無言スルーだったのに」
涙が出そうだと言うから、出しておけば?と冷たいことを言っておいた。