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恋のフィロソフィー
第1章 人殺しの顔は、
見た事ある顔だった。
生徒ではない。
どう見ても10代には見えない。
焦げ茶色の癖っ毛がトイプードルの毛にそっくり。
眼鏡のレンズ越しに私を睨む目はくすんだメダルのような輝きをしている。
身長は普通。
170センチ半ばくらいだろうか。
「君、美術部の子じゃないよね?」
少し掠れたハスキーボイス。
‥‥‥‥あ、思い出した。
この人美術担当の教師だ。
ついでに美術部顧問だ。
あまり関わったことがないからすっかり記憶から抜け落ちていた。
印象も薄いから覚えていなかった。
「すいません勝手に入って。暇だったから校内をふらついてたんです。そしたらこの絵があったからつい気になって」
「スクールバス待ちかい?」
「はい。あと30分くらい待たなきゃいけないんです」
美術室に入ってしまった理由を話すと、先生は頭を掻きながら私に近づいてきた。
そして気まずそうな顔をして目の前まで来た。
色白で顔色が悪く見える細身な先生は、病弱そうだ。
強そうには見えない。
「‥‥この絵は見られたくなかった」
ボソッと吐き出すようにそう呟いた先生は手を伸ばし絵に手の平を付けた。
大きくて細くて長い指が絵の主役を上手く隠す。