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恋のフィロソフィー
第1章 人殺しの顔は、
丁度良く鳴ってくれたチャイムのお陰で、美術室から出て行く口実ができた。
先生は逸らしていた目を戻し、私の目を見た。
くすんだメダルみたいな目がジッと私を見る。
眼力と言うほど大きな目をしていないのに、先生のくすんだメダルみたいな目は私の喉を押すみたいに息苦しくさせる。
「‥‥‥そろそろ行きます」
「ああ、気をつけて」
立ち上がり軽く先生に会釈をする。
そして美術室から出ようとした時、後ろから私を引き止める掠れた声がした。
「月曜は休部だから、暇なときまた来ていいですよ」
『また来ていいですよ』、とても上から目線なお誘いだ。
けど、私はまた来ると思う。
「暇だったら、来てあげてもいいですよ」
上から目線の誘いを上から目線で受けてあげた。
私の上から目線返しをどんな顔で聞いているのかは分らない。
あくまで予想だが、
「待ってあげてますから」
クスリと笑っているだろう。