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冷血な獣
第9章 よんかく

「もしもし、私です。部屋の前にいます」

携帯を耳に当て、淡々と話す鷺沼さん。

良く見ると、クールな雰囲気が龍河さんに似ている。

……そんな事を考えながら立ち尽くしていると、電話を切った鷺沼さんから話し掛けられた。

「ドアを開けるそうです」

その言葉にほっと安心する。

「良かった……」

けど、私の事を入れてくれると決まったわけじゃないのよね……。
そう不安に思っていると、玄関のドアが開いて中から龍河さんが顔を出す。

「鷺沼、何しに来た」

苦虫を噛み潰した様な顔。

それもそうだ。

マンションの契約を、勝手に解約されたりしたのだから。

「ご無沙汰してます。ここではなんなので、中へ入っても?」

「ああ……」

返事をすると、龍河さんはチラッと私の方へ視線を送る。

……私の事も部屋に入れてくれるのかな。

私がそんな期待に胸を膨らませていると、鷺沼さんが落ち着き払った態度のまま言った。

「彼女、入れてあげないと髪が濡れたままで風邪をひきますよ」

「お前には関係ない」

すかさず答える。

そんな龍河さんは、冷たい瞳で続ける。

「佐伯、入れ」

「はい……!」

……良かった。部屋に入れる!

そのまま私は鷺沼さんの用件が何なのかも知らずに、喜びながら部屋へと入るのだった。
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