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冷血な獣
第9章 よんかく

* * *

リビングに三人で入ると、唐突に鷺沼さんが質問した。

「ところで、どうして部屋から追い出されていたんですか?」

その言葉に私は、立ち尽くしたまま押し黙る。

……龍河さんにキスして、追い出されたなんて言えない。

女として恥ずかし過ぎる。

「ここはこの方の部屋ですよね? 灯さん」

無表情で鷺沼さんが龍河さんの方を見ると、不機嫌そうに話す龍河さん。

「そんな事はどうでも良い。お前、何しに来た」

今までとは違うピリピリとした雰囲気を、更に殺気立たせる様に、鷺沼さんは話す。

「単刀直入に言いますが。灯さん、椿様と婚約して下さい。そうしなければ、この部屋は解約します」

「ああっ? 貴様……それを伝える為に来たのか?」

「そうです。社長からの命令です」

「また金で人を操るつもりか?」

「それは灯さん次第です」

怒りに身を震わせる龍河さんへ、鷺沼さんは無表情で話続けると、いきなり隣に立っている私の方へ視線を向けた。

「灯さん、この方とどんなご関係ですか? もしや椿様と婚約出来ない理由は、この方ですか?」

「……そんなわけあるか」

「嘘ではないですね? もしこの方と男女の仲にあるというなら、私はそれを阻止しないといけません」

「阻止? どうやってだ? まさか佐伯とお前が付き合うとでも言うのか?」

龍河さんの質問に、ごくっと唾を飲み込む。


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