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冷血な獣
第9章 よんかく
名前、調べたんだ……。いや、それよりも。
動揺した心を落ち着かせながら、
「あの……それで、龍河さんは……?」
問い掛けると、相変わらず淡々とした返事が返ってきた。
「和仁社長の屋敷にいます」
深い闇を抱えたような瞳。
見ているだけで、あまりこの人と関わらない方が良い様な気がしてくる。
緊張しながらもまた尋ねると、
「……龍河さんは、結婚するんでしょうか」
「ええ。します」
ハッキリと答えられて、
「ですので、もう灯さんの事は諦めて下さい」
ぐうの音も出なかった。
「後で灯さんの荷物を運び出しに来ます。では」
菓子折りを渡され、礼儀良くお辞儀をした鷺沼さんがドアを閉めると、呆然としたまま頭が真っ白になる。
……なんて身も蓋もない。そんな言い方、救われないじゃない。昨日の今日で、まだ心の整理もついていないのに。
そのまま私は菓子折りを握り締めたまま、暫く立ち尽くしていた。