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冷血な獣
第9章 よんかく
そしてリビングに入ると、鷺沼さんの方を振り返りながら質問した。
「置き忘れた物って何ですか?」
「指輪だそうです」
「指輪……?」
龍河さん、指輪つけてたんだ。
気付かなかった……。
鷺沼さんがリビングの棚の上を探し始める姿を見ながら、壁時計の針の音を聞いていると、すぐに鷺沼さんが話し出す。
「ありました。ありがとうございます」
手には四角い白色の指輪ケース。
……そこにそんなものが置いてあるなんて気付かなかった。
「いえ……。そういえば、鷺沼さんと龍河さんは知り合いなんですか?」
ふとした疑問を投げ掛けた。
「高校の頃の先輩と後輩です」
「そうだったんですか……」
棚の前に立ったまま鷺沼さんが答えると、相槌を打つ。
……だから龍河さんの事、名前で呼んでるんだ。
龍河さんも知り合いの様な態度だったし。
「高校の頃の龍河さんも、あんなクールだったんですか?」
思わず興奮して、笑顔になりながら尋ねていた。
そんな私をじっと無表情で見つめる鷺沼さん。
「……まだ灯さんへ好意を抱いている様ですね」
その言葉に、私は口ごもった。