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冷血な獣
第9章 よんかく

強く上下唇を吸われながら、鷺沼さんの胸を両手で押した。

「ンッ……」

同時に、鷺沼さんが唇を離す。熱を帯びた唇には、まだ柔らかなキスの余韻が残っていた。

「何でこんな事を……」

恐怖で動悸が止まらない。鷺沼さんの顔を見ながら眩暈さえして、フラフラと立ち眩みがした。

「社長命令だからです。灯さんに好意を抱く女性には気持ちを忘れて貰わないといけません」
「鷺沼さんは私の事が好きでなくても、こういう事が出来るんですか……?」
「出来ます。仕事ですから」

疑念の余地なく鷺沼さんが話す言葉を聞くと、更に頭がぼうっとする。

「仕事の為なら何でも出来ますよ。申し訳ないですが、貴方をこのまま抱く事だって……」

鷺沼さんがスーツのジャケットを脱ぐと、その場へ崩れる様に座り込んだ。



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