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冷血な獣
第9章 よんかく
すると、鷺沼さんが自身の足元にジャケットを落とす。
「どうしてそこまで……」
「どうして? そんな事、考えた事もないですよ。出世しようと必死でしたから」
この人は出世の為なら何でもすると言うんだろうか。
それが非人道的な事でも、平然と。
「大丈夫です。すぐに忘れられますよ」
私の前でしゃがむと、ニコッと微笑む。普段の無表情さとはうって変わり、穏やかな笑顔。
……笑えるんだ。笑わないかと思っていたのに。でも今笑顔を見せられても、嘘くさいとしか感じない。
「貴方も早く灯さんを忘れたいでしょう?」
その質問に一瞬戸惑った隙に、再び鷺沼さんから唇を塞がれていた。