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冷血な獣
第9章 よんかく
* * *
過去を振り返ってみると、ろくな恋愛をしていない。彼氏が出来たのは、龍河さんを入れて4回。その内全て、相手からフラれて別れた。
恋愛にも向き不向きがあって、私は向いていないんだと思う。どうやら相手の言いなりになる質らしい。
優柔不断。それって結局、どうでも良いと初めから選択していないのと同じだ。
「佐伯さん、こっちを向いて下さい」
私の部屋のリビング。そこで目の前に立つ鷺沼さんからそう言われると、俯いていた顔を上げる。
昨日言った通り、鷺沼さんは夜に部屋を訪ねてきた。そして涼しい顔でリビングへ入るなり、戸惑う私の唇へ口づける。
「ンッ……」
昨日と一緒で、義務的なキス。それなのに上下唇を優しく食まれる度頭がくらくらして、キスが止むとぼうっとしながら鷺沼さんの話を聞いた。
「……素直ですね。灯さんを諦める気になりましたか」
もうどうでも良い……。所詮私は、良い恋愛なんか出来ないし。
「諦めるも何も、龍河さんから相手にされてませんから……」
卑屈な言葉を呟く。すると。
「そうですね。灯さんが一人の女性に固執するなんて、ありえないでしょうから」
冷淡に言い放つと、鷺沼さんは再び口づけを再開した。