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冷血な獣
第10章 無自覚
「……佐伯とのキス、懐かしいな」
龍河さんの唇まで残り数センチ。のところで、龍河さんがぽつりと呟いた。途端に、私は我に返る。
「う……」
私、何してるんだろう。こんなのフェアじゃない。酔ってる龍河さんにするなんて。きっと明日になれば、手を繋いだ事も忘れているかもしれないのに。
「すいません……龍河さん」
「どうした? しないのか?」
顔を離した私を不思議そうに見て、龍河さんは言い放つ。
「それなら、俺からするぞ」
その言葉に怯んだ隙。
「えっ……ンッ」
缶ビールのほろ苦い味が口内を支配した。