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冷血な獣
第10章 無自覚
……こういう事、前にもあった。龍河さんから付き合おうと言われた日だった。酔った龍河さんから抱かれて。……って、あれ? そういえばあの時、龍河さん本当は酔ってなかったんだ。酔ったと嘘をついていて。
「……ンッ……ハァッ……」
だとしたら、おかしい。この龍河さんは何? 酔って今、私にキスをしている龍河さんは――
「……佐伯?」
私が胸を押して龍河さんの体を引き離すと、龍河さんが不思議そうに見る。
「嘘、ですよね? 酔ってるの」
もう騙されたくはない。あの時の二の舞にはならない。
「……ああ。気付いたか」
そう落ち着いて龍河さんが答えると、酔いが覚めた様な気がした。