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冷血な獣
第10章 無自覚
「そんな事だけで、別れたんですか……」
両拳が震えた。
「すまないが、俺にとっては重要な事だ」
もう聞きたくない……。龍河さんがこんな人だったなんて。
「小さ過ぎます……」
結婚したくないなら、相談してくれれば良かったのに。一人で勝手に決めて、勝手に別れを選んで。酷いとしか思えない。
「別れて正解でした」
ベンチから立つと、耳に入る冷たい声。
「……何処へ行くんだ?」
「自分の部屋へ帰るんです」
「ダメだ。隣に鷺沼がいるんだぞ」
そんな事、龍河さんには関係ない。そう伝えようとして、座っている龍河さんの方を振り返る。瞬間――
「そうですよ。私がいるんだから、早く何処かへ逃げないと」
背後から声が近付いてきたかと思うと、口を何かで塞がれる。すると目の前が真っ暗になり、意識が次第と遠退いていった。