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冷血な獣
第10章 無自覚
* * *
「目が覚めましたか?」
目を覚ますと、見慣れない部屋にいた。高級そうな家具やインテリアの揃った、洋館らしき建物で。
一人掛けの椅子に座らされたまま、体と椅子をロープでぐるぐる巻きにされ、両手首を背後で縛られている。……こんな事する犯人は、一人しかいない。
「……鷺沼さん。ここは何処ですか?」
目の前に立っている鷺沼さんへ質問すると、冷然とした答えが返ってくる。
「和仁家の屋敷です」
「和仁家の!?」
そこでどうして縛られていないといけないんだろう。私が不思議に思うより早く、鷺沼さんは続けた。
「灯さんは、隣の椿様の部屋にいます」
「椿さんの?」
龍河さんも一緒に捕まったんだ……。折角逃げたのに……。大丈夫だろうか。
「心配は必要ないですよ。椿様は灯さんにだけ、お優しいですから」
私の心をよんだ様に鷺沼さんがクスッと笑うと、私は呟く。
「別に心配なんかじゃ……」
「ケンカでもしましたか? それはそれで都合が良いですが……」
そのまま私の方へ近付いてくると、私の前で立ち止まり。妖しく微笑んだ。
「もうショック療法は必要ないですか?」
「ンッ……」
必要ないと聞きながらどうして……。顔を右手で掴まれ、上の方を向かせられながら口付けられると、眉根を下げる。