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冷血な獣
第10章 無自覚
「後程、椿様に紹介させて貰います」
「……本気なんですか?」
「私が嘘をつくように見えますか?」
そのまま降りていく手に首筋を撫でられ、肩を優しく掴まれると、またふわりと笑顔を作られた。
「酷い様にはしません。こう見えて、結構大事にしますよ」
「そんな事……」
望んでいないし、ノーサンキューなんですが!
「それより、お腹が減いたでしょう? 良いものをあげます」
スーツの胸ポケットに手を入れると、何かを取り出して、鷺沼さんは掌に乗せたそれを私に見せる。
それが苺柄の包装紙に包まれたキャンディの様だと気付くと、私はポカンと口を開けた。
「甘い物はお好きですか?」
「好きですけど……」
「口を開けて下さい」
包装紙の端と端を引っ張り、ピンク色の飴を指で摘まんで私の口の前へ差し伸べる。
「いや、怪しすぎるでしょ……」
思わずそう溢す私には、鷺沼さんは微塵足りとも笑わなかった。