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冷血な獣
第10章 無自覚

「……誰だ?」


すぐ耳へ入った声に、安堵した。

ドアを閉めると眩暈がしながら、薄暗い部屋の中へ進んでいく。


「……龍河さん……」


部屋の奥にある窓。そこの前に立っている龍河さんと目が合うと、うっすら目に涙が滲んだ。


「佐伯、どうした、その格好……鷺沼か?」


対して、龍河さんは私に気付くなり一瞬驚いた様に目を見開き、すぐに険しい顔付きへ変わる。


「あいつに何かされたのか!」


そして私へ近寄って、両肩を掴んだ。


「……飴を……食べさせられて……」


龍河さんだ。本物だ。


「飴? どんな飴だ?」
「ミント味の……食べてから熱くて、頭がぼーっとします……」


深刻そうに質問する龍河さんに答えながら、私は龍河さんの胸にすり寄る。


「ぼーっと……? おい、佐伯」


そのまま胸に顔を何度も擦り付けながら体に抱き付くと、慌てる声が耳に入った。


「何をしている! 離れろ!」







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