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冷血な獣
第10章 無自覚
その後続けられた言葉を聞いて、私は現実に返った。
「……俺は、佐伯とまた付き合うつもりはない」
分かっていた筈だけど、いざ本心を聞くとこうも辛いとは……。
首へすがり付いていた両手が、自然と解けた。
「やめるか? それならこのまま早く逃げるぞ」
薄情、というか冷血過ぎて、もう龍河さんの事が分からない。
こうなるならいっそ、初めから付き合いたくはなかった。
龍河さんにあの日、抱かれたくなかったとさえ思う。
「佐伯、どうする……?」
龍河さんから聞かれると、答えようとする。
しかし、部屋のドアが開いて誰かが部屋に入ってきた事に気付くと、ドキリと心臓が大きく脈を打った。
「あれ? 二人で何をしてるんですか?」
足音がベッドの近くで止まると、私と龍河さんは声のした方を向いた。
すると、龍河さんが顔を歪めながら話す。
「椿。もう戻って来たのか?」
椿って、椿さん?
私は驚きながらベッドに起き上がり、椿さんと目を合わせる。
ベッドの側にはTシャツ、ジーンズ姿とラフな格好をしているけど、スタイルが良くモデルの様に着こなし。
背中まで黒髪を伸ばした綺麗な女性が立って、嘲笑うかの様な笑みを私達に向けていた。