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冷血な獣
第2章 冷血人間の彼女
そんな事を聞かれても…。
「分かりません…すいません…」
「そうか。俺の方こそすまない」
私が申し訳なく謝ると、龍河さんは私の腕から手を離す。そして真剣に続けた。
「俺が言いたかったのは、俺以外の男と二人で会うな。それと、誤解を招く言動は控えて欲しい」
「…すいません。昨日男の人といたなんて嘘なんです。昨日は茶織先輩と出掛けていました…」
龍河さんって、本当に真面目なんだ…。皆冷血だと思っているけど、真面目過ぎるだけなのかな…?
「そうか。なら良い。すまない、疑って」
「いえ…」
「じゃあ戻るか」
「はい…」
龍河さんの言葉に返事をすると、二人でドアの方へ歩き出す。だけど、再び龍河さんが立ち止まって話すと、私は不思議になりながら龍河さんの方を振り向いた。
「そうだ、妃南」
―――何だろう?
そう思っている一瞬の隙に、唇へキスされるとは思いもよらなかった。自身の唇を私の唇へ軽く触れ合わせると、龍河さんは顔を離して会議室から出ていく。何事もなく、平気そうな態度で。唖然としながら一人会議室に残された私の事なんて、多分気付いてはいなかった。
「ヤバイ…」
体をのぼせつつポツリと呟く私の声が、静まり返った会議室に響いていた。